彼女は街での住まいも無事に確保できて、白蓮さんの口利きで着物店でのお針子さんの仕事も決まり、明日旅立つことになっている。


「白蓮さまにもう一度謝罪しましたら、改めてお許しをいただき……」


彼女は感極まった様子で涙を目に浮かべている。


「まさか住まいや仕事の世話までしていただけるとは。すべて彩葉さまのおかげです。本当にありがとう」


ポロリと涙をこぼしながら頭を下げる彼女に慌てる。


「いえいえ。志麻さんがお元気になられて、本当によかった。つらいことがあったらまたご飯を食べに来てください。今度は皆でワイワイ食べましょう。あっ、取り合いなので頑張らないとなくなりますからね。いつでも待ってます」
「はい」


涙を流しながらも最高の笑顔を見せてくれた彼女を見て、私の心も満たされていた。

空の器を台所に運ぶ途中でふと足が止まる。


「私……」


無意識だったが、志麻さんに『いつでも待ってます』なんて言ってしまった。