「白蓮さまは彩葉さまのおそばにいられて、かなり力が増大しています。できれば月の世でひどい扱いを受けているあやかしを救いたいと思っているくらいです。でも、彩葉さまがここにいることが幸せでないのなら、他のことは二の次です。ただ、黒爛が本格的に彩葉さまを狙い始めた今、現世にお戻しすることもできなくて苦しんでおられます」
「苦しんで……」
まったくそんなそぶりは見せないが、過去の話を聞いていると鬼童丸さんの言うことが間違いではないような気がする。
「私がもしこちらに残ると決めたら、もう現世には行けませんか?」
「いつでも行けますよ。買い出しに行くあやかしもいるでしょう?」
そういえば、欲しいものを頼めばすぐに現世でそろえてきてくれる。
「そうでした」
「あぁ、アイドルとなったあやかしも、しょっちゅうこちらに来ておりますし」
「いつ!?」
特別彼のファンだったわけではないが、近くにいるかもしれないという事実に身を乗り出してしまう。