大破した車から助かったのは私ただひとりで、しかもかすり傷ひとつなく車外で泣いていて、〝奇跡の子〟と新聞で騒がれたと祖母にあとで聞いた。

あれっ? 
あのとき……地面にたたきつけられる寸前で、車から降ろされたような。

私に手を差し出したのは白蓮さんだったの?


墓苑で会ったとき、彼は私に『間に合わなくてすまなかった』と口にしたが、父と母を助けられなかったことを言っていたんだ。


「白蓮さまは彩葉さまの大切なご両親を救えなかったという後悔で、しばらく食事ものどを通らず……。ですがある日どうやら彩葉さまのおばあさまに妖狐であることを知られたようで」

「待ってください。祖母と白蓮さんは知り合いだったのですか?」

「はい。ご両親を一度に亡くされた彩葉さまのことが気がかりで、白蓮さまは桜庵に通っていらっしゃったんですよ」


私の記憶にはないし、祖母から彼の話を聞いたこともないが、お客さんだったのか。


「そうだったんですね。でも、祖母が白蓮さんが人ではないことまで知っていたということですか?」

「詳しくは話されないのでわかりませんが、どうもそのようです。その日を境に彩葉さまを必ず守ると奮起されて今に至ります」


まさか、祖母がそんな秘密を抱えていたとは。