「黒爛の手下くらいでしたら、私がいれば追い払えます。ただ、黒爛自身が来ると白蓮さまのお力が必要ですので、時間稼ぎをして幽世から呼ぶということを繰り返しておりました」
「そんなご迷惑を……」


まったく知らなかった。


「少しも迷惑ではありません。私たちにとっても彩葉さまは大切なお方ですから」


鬼童丸さんにまでそう言ってもらえるとは思わなかった。


「おばあさまが亡くなられてからは、白蓮さまは彩葉さまを大変ご心配になり、何度も現世に足を運ばれて彩葉さまのご様子を伺っていらっしゃったのです」

「そうだったんですね……」


だから黒爛が現れたときに、いち早く駆けつけてくれたのか。


「はい。それとご両親が亡くなられた頃もそうです。白蓮さまは彩葉さまをなんとか救い出すことはできましたが、ご両親は間に合わなかったそうで……」
「え……」


私が五歳の頃、山道で父がハンドル操作を誤ってガードレールを突き破り、崖から三十数メートル下に転落した。