「あの、ずっと疑問に思っていたのですが……」
「なんでしょう?」
「私、祖母の墓前で黒爛に会うまで襲われた記憶はありません。何度でも私を殺すチャンスはあったでしょうに、どうしてでしょうか? 私の存在に気づいてなかったからですか?」
それがずっと引っかかっていた。
祖母が亡くなる前のような生活ができるのならば、現世に戻っても問題はない。
「うーん。終わったことですからお話しますと、何度も襲われていたのですよ、実は」
「え!」
「ここを長く離れることができない白蓮さまは、私や別のあやかしを彩葉さまのおそばに置かれました。あぁ、現世でアイドルとやらをしているあやかしも、最初は彩葉さまを守るために派遣されたのです。才能を開花させまして、任務は外れましたが」
私はしばし言葉を失った。
それって、あの川下友久さんのこと?
あの国民的アイドルが私の護衛?