「あぁ、でも大丈夫ですよ。彩葉さまに前世の記憶がないことはご存じですし。ですが、長きに渡り彩葉さまを捜し求めて、やっと見つけたときの白蓮さまの喜びようといったら」


彼はそのときのことを思い出しているのか、小さく笑みをこぼした。


「彩葉さまを亡くされて力の源を失われた白蓮さまは、黒爛と対峙することすら放棄しそうでした。魂の抜け殻とでも言いましょうか。もちろん激しい憤りはありましたが、彩葉さまがいなくなった代償のほうがずっと大きかったのです」


それほど悲しんでくれたのか。

両親や祖母を失い、心が潰されて無気力になった私と同じかもしれない。


「彩葉さまの『またいつか会いましょう』というお言葉だけを励みに生きてこられたのですよ。私たちは死してもなお白蓮さまの心を支えていらっしゃる彩葉さまのことをさすがと思っておりました」
「いえっ、それは前世の私ですから」


過大評価されても困る。