ふっくらさせるために重曹入りのお湯で戻した黒豆の煮物は、大量に作ってもすぐになくなってしまうほど、皆好きなようだ。
箸休めとして作ったはずなのに、勘介くんなんてご飯にかけて口の中に流し込んでいる。
鬼童丸さんに『行儀が悪いぞ』と叱られているが、どこ吹く風だ。
『止まりません!』とニコニコ顔の彼を見ていると、私まで口元が緩む。
これだけ豪快に食べてもらえると作り甲斐もある。
朝食の片づけが終わり自室に戻ろうとすると、鬼童丸さんとすれ違った。
「ここの生活も慣れてきましたね」
「はい」
いい返事はしたものの、私がずっとここで暮らすことを前提として話しているようで、一瞬眉根を寄せてしまった。
「少し、お話をしましょうか?」
「え?」
「心に引っかかるものは吐き出しておいたほうがいいですよ」
なんて察しがいいのだろう。
私はうなずき、一応周りに雪那さんがいないことを確認してから彼に続いた。