私は尻尾に触れていると悪夢から解放されてぐっすり眠れるが、絶対に迷惑をかけているはずだ。

私がうなるたびに彼が来てくれるのだから。


「そんな心配は無用だ。力は抜けるが俺にとっても幸せな時間だからね」
「幸せな?」
「そうだ。彩葉が穏やかに暮らせるのが俺の望みだ。それを壊しているのも俺だけどな」


一瞬視線を伏せた彼は、悲しそうな表情を浮かべた。

たしかに、彼と関わりがなければ首を絞められるなんていう衝撃的な出来事を経験せずにすんだだろう。

幽世に来て白蓮さんの存在を知ったときは、どうして私に関わるの!と強い反発心が芽生えた。

しかしよくよく考えると、前世の私は幽世に望んで来たわけだし、白蓮さんだけのせいではない。


しかも彼の話が本当ならば、私が彼との再会を願ったのだし。


「私……こちらに来てよかったと心からはまだ言えません。やはり慣れた世界に戻りたいという気持ちが強いです。ただ、私の作った料理で皆さんが笑顔になるのを見ていると、とてもうれしくて……」