「彩葉はこちら側ではないのか?」
「三人ににらまれたら怖いでしょ?」


ふたりでも迫力満点なのだから、話せなくなる。


「ふぅ。それで?」
「豆吉くん、どうして組紐を盗ったか話してみて」


促したものの、視線を下に向けたままで口を開かない。


「以前はきゅうり、その前は下駄。さらにその前は桶だったそうだな。なんの一貫性もないが、どんな理由で盗んだのだ?」


白蓮さんが尋ねても黙ったまま。


「あっ、そうだ。勘介くんがからかわれていたと言っていたけど、あれはなに?」
「あれは……」


ようやく豆吉くんが口を開いた。


「僕はいつも豆腐を配って歩いているだけなんだ。でも皆、自分が頼まれた仕事を僕に押しつけてくるようになって、断ると僕の豆腐を投げ捨てられたりするようになって……」
「それはひどい」


その痛みを知っているから、私が大根おろしを粗末に扱って叱ったとき、より深く反省したのかもしれない。