もうひとりで生きていかなくてはならないのだから、しっかりしなくては。
その晩は、カーテンを開けたまま眠りについた。
下弦の月が煌々と輝く夜空を、祖母が上っていくような気がしたからだ。
「おばあちゃん、ゆっくり眠ってね。私は大丈夫」
祖母はこの家と桜庵、そして私のためにコツコツ貯めていてくれたお金を残してくれた。
それに、預かってもらっていた父と母の遺産も手つかずで残っている。
だから当面の生活には困らないが、これから先どうしたらいいのか本当はよくわからない。
一緒に生活していたのは母方の祖母だが、父方の祖父母はもうすでに他界している。
探せばほかにも遠い親戚がいるのかもしれないけれど、会ったこともないのだから他人も同然。今さら一緒に暮らしたいとは思わない。
それなら自立したほうがいい。
とはいえ、誰にも相談できないという状況に心が折れそうになっていた。
しかし、疲れがたまっていたようでいつの間にか眠りに落ちた。