「現世では衣食足りて礼節を知ると言うんです。とりあえずお腹を満たしましょう」
学年末のテストに出たばかりのことわざが役に立つなんて!
テストでは間違えたけど……。
「なんだそれ?」
さすがに白蓮さんもことわざは知らないらしい。
「お腹がいっぱいになって初めて礼儀を知るのだから、お説教の前にご飯にしましょうという意味です」
ちょーっと違う気もするが、まあそんな感じのはず。
「本当か?」
「ほ、本当ですとも!」
突っ込まれて焦ったが、とりあえず虚勢を張る。
「お前は……バカがつくお人よしだな。昔から変わらない」
前世の私もこんな感じだったのか。
もうひと押し?
「私のそういうところが、す、好きだったんじゃないですか?」
豆吉くんに食事をさせるための方便とはいえ、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい気分だ。
白蓮さんは一瞬目を見開いたが、すぐにニヤリと意味深な笑みを浮かべて口を開く。