彼が盗ったものが組紐だと知ったとき、これは悪さをして周りの気を引きたいだけではないかと思った。

陽の世にはお金は存在しないのだから、組紐を手に入れて売るわけでもなかっただろう。

それと交換になにかを得ようとしていた可能性はあるが、それならもう少し価値が高そうなものを盗るような。

幽世では組紐の価値がすごく高いと言うならばわからないけれど。


以前チラッと聞いたときも、盗まれたものがきゅうりだったような気がするので、余計にそう感じたのだ。


「彩葉さま、ご飯食べましょう!」


そのとき、部屋の掃除に行っていた勘介くんが入ってきた。


「うんうん、お待たせ」
「あっ、豆吉」


勘介くんは彼を知っているらしい。


「お友達?」
「友達というほどじゃないけど、前に街に行ったときからかわれてたから助けてあげたんだ」


からかわれて?

勘介くんが話すと、豆吉くんは顔を背けた。

この辺りにわけがありそうだと感じた私は、笑顔を作って勘介くんに指示を出す。


「今日は豆吉くんも一緒だよ。運んでくれる?」
「はい!」


私は尻込みする豆吉くんを引きずるようにして大広間に向かった。