「豆吉くんか。なんのあやかし?」
「豆腐小僧です」


豆腐小僧? 
聞いたことがないあやかしで、想像がつかない。


「……そう。なにか盗んでしまったの?」


隣で作業を続けながら淡々と尋ねると、小さくうなずいた。


「なにを?」
「組紐」
「組紐って、着物の?」
「うん」


帯締めに使う紐のことらしいが、女性が使うもので豆吉くんには必要ないような……。


「どうして組紐なんて?」


質問したが今度は口を閉ざして答えてくれない。
彼はそれきり黙りこみ、手だけを動かし続けた。