調理台の両側から挟み込もうとしても、私や和花さんの間なんていとも簡単にすり抜けて逃げていく。

とはいえ白蓮さんも来て鬼童丸さんとの間に挟まれるとさすがに観念したのか、彼は動かなくなった。


しかし、目の間に置いてあった大根おろしの入った器に手を伸ばしてそれを投げつける。

鬼童丸さんはすっとよけたが、私はその瞬間、堪忍袋の緒がぶちっと音を立てて切れた。


「いい加減にしなさい!」


こんなに大きな声を出したのは記憶にない。

祖母に、食べ物は私たちの命をつなぐ大切なものだから決して粗末に扱ってはならないと幼い頃からこんこんと説かれてきたので許せなかったのだ。

白蓮さんがあんぐりと口を開けて私を見ているのがわかったが、感情の高ぶりを抑えられない。


「食べ物を粗末にするなんて、どういうこと? すぐに拾いなさい!」


散らばった大根おろしを拾うのは至難の業だが、私はあえて命じる。

すると、さっきまで威勢のよかった男の子が、素直にそれに従い始めた。