「鬼童丸」
続いて白蓮さんの声もしたので台所から廊下を覗くと、白蓮さんが勘介くんより少し小さい男の子をひょいっと肩に担いでいる。
しかしその子は全身をよじって激しく抵抗し、白蓮さんの背中を思い切りどんどんと叩いていた。
「どうされたんです?」
慌てて飛んできた鬼童丸さんが顔をしかめている。
「例の子だ。なにを聞いても口を利かないから連れてきた」
例の子とは、盗みを働いている子のことだろうか。
「ひとまずこちらに」
鬼童丸さんが白蓮さんからその子を預かろうとしたが、彼はちょっとした隙をついて走り出す。
そしてこちらに向かってきたかと思うと、台所の中に入った。
「ちょっ、火の近くにはいかないで。危ないから!」
もう薪の火は落としたが、まだ熱い。
慌てて追いかけるも、するっと逃げられてしまいつかまらない。
鬼童丸さんも入ってきて大騒動が始まった。