パスタは桜庵のメニューにはなかったが、祖母がよく作ってくれた。
たまには洋風の食事もと気を使ったらしいのだが、材料は和風だった。
和花さんに大根おろしをお願いして、私はその間にツナと一緒に入れるシメジやなめたけといったきのこの類を調理する。
その傍らで、かつおぶしと昆布をしっかり効かせただし醤油も作った。
以前うどんを作ったときのだしに似ているが、昆布を入れるとまた風味が変わる。
これは多めに作っておいて、別の料理にも使いまわすつもりだ。
「彩葉さま、そんなにいろいろ一度によくできますね」
「慣れかな。和花さんもできるようになるわよ」
と言ったものの、何百年もできていないのだから難しいのかな?
「はい、頑張ります!」
とはいえ彼女の笑顔が弾けているので、余計なことは言わないでおいた。
「離せー」
パスタがゆであがった頃、どこからか大きな声がして和花さんと顔を見合わせる。
「離せと言ってるだろ!」
子供の声?