桜庵で着物を着ていたので着付けができてよかった。
しかも着慣れているのであまり違和感もない。
それから誰も見ていないことをいいことに、大股を開いて台所に走った。
和服に似合うたおやかな所作というものは、私にはなかなか難しい。
「和花さん、おはようございます!」
「おはようございます。元気ですね」
昨日ぐっすり眠れたからか、久しぶりに体が軽い。
「はい。あっ、ご飯うまく炊けてそう……」
彼女ひとりで炊いても、焦げ臭いにおいもしないし、コトコトといい音もする。
「途中で薪を抜きましたから。火加減に気をつけることなんてすっかり忘れていたんです」
「あはは」
ということは、いつもは適当に火をつけてそのまま最後まで放置だったのかもしれない。
大雑把な性格なのね、多分。
「今朝はなにを作りますか?」
「とりあえず味噌汁は必須ね」
朝はだしのきいた味噌汁を飲まないと一日が始まらない。
材料を覗いて、大根と油揚げの味噌汁に決定した。