なに言ってるの?


「だから、俺の嫁だ。そうすれば守ってやることができる」


ずいぶん親切な人だと思っていたのに、ただのナンパ師?

もしかして、黒爛と結託して切羽詰まった状況を作り出して恩を売っておいて、最初からナンパ目的だったとか?

こんな人の前で泣いてしまったなんて、最悪だ。


「なんなんですか、あなた。人をバカにするのもいい加減にしてください! しかも、おばあちゃんの前で……」


だまされそうになった自分が悔しくてたまらない。

祖母に心配をかけまいと泣くことすら耐えてきたのに、こんな男に引っかかる姿を見せたら、安心して天国に行けやしない。


「ばあさんの前だから言ってるんだ」


あぁ、彼がなにを考えているのかさっぱりわからない。

どうやら私たちの意見が交わることはなさそうだ。


「失礼します!」


こんなに腹が立ったのは初めてだった。

祖母のことまで冒涜されたようで、むかつきが止まらない。


感情の爆発が抑えられなくなった私は、一目散に駆け出して墓苑をあとにした。