「こちらに来てからフル回転で疲れているだろう? 今は休息が必要だ」
「はい」


いつもは背筋をピンと伸ばしてたたずんでいるくせに、全身の力が抜けたようにふにゃっとしている彼のことが心配ではあったけれど、ずっと求めていたものが見つかったようなうれしさと心地よさのせいかまぶたが下りてきて、そのまま意識を手放した。



翌朝目覚めると、白蓮さんの姿はなく布団に寝かされていた。


「あれも夢?」


体を起こして考えてみたが、現実に違いない。
ふわふわの尻尾に包まれた温もりをまだ体が覚えている。


それにしても、尻尾に触られるとあんなふうになるなんて。

弱みを握っちゃった?

いつもは凛としている彼の意外な一面に、思わず笑みがこぼれた。


「朝ご飯!」


作らなくては。

きっと和花さんがひとりで格闘している。
宿の人たちも待っているかもしれない。


私は白蓮さんが用意してくれたというたくさんの着物の中から渋い青紫色の着物を選んで身に纏う。