「ありがとうございます。今日、化粧というものをしてもらって街に繰り出したら、皆さんいろいろくださって」
彼女は風呂敷包みを広げて見せた。
その中にはかんざしや帯、さらにはかわいらしい下駄まである。
貢物じゃない。
私、もらったことないよ?
「どうしてくださるんだろうとつぶやいたら、鬼童丸さんが、お前がきれいだからだろって」
頬がほんのり赤く染まったのは気のせい?
鬼童丸さんはやめておいたほうがいいわよ。
だって、ねぇ。
雪那さんの鬼の形相が浮かぶ。
まあでも、それは本人同士の気持ち次第だけど。
「私、近いうちにここを出て働きます。そしてあの人よりいい旦那さまを捕まえてみせるわ!」
よかった。鬼童丸さんに恋をしたわけじゃないのね。
「それがいいです。志麻さんなら素敵な旦那さまをゲットできます」
「彩葉さまも幸せですよね」
「ん?」
どうして突然私の話?
「白蓮さまが大切にしてくださいますでしょう? うらやましい限りです」
「そ、そうですね」
大切にしてもらっている自覚はあるが、嫁入りを拒否していることは黙っておいた。