「あんた、いい女だよ。私の次だけど」


ボソリと漏らした雪那さんの言葉に少し驚いた。
ぶっきらぼうな言い方だけど、励ましているのだ。

意外と優しいところもあるじゃない。


「あぁ、言っておくけど、鬼童丸さまにちょっかいかけたらただじゃすまないからね!」


やっぱりそれは付け足すんだ……。と思いつつ、ほっこりした気持ちになった。


「それじゃあお待ちかね。鬼童丸さん」


廊下に出て大きな声で呼ぶと鬼童丸さんがやってきた。


「鬼童丸さま! 見てくださいな。この絵、私が描いたんですよ」


絵じゃないってば。

意気揚々と鬼童丸さんにすり寄っていく雪那さんには、これから残念なお知らせが……。


「ほぉ、これはなかなか。志麻、このほうがいいぞ」


鬼童丸さんが志麻さんを褒めると、雪那さんの眉間に三本のくっきりとしたシワが寄る。


「それじゃあ行くか」
「行くって、どちらに?」


質問したのは誘われた志麻さんではなく、雪那さんだ。