――多分、気に入ってくれている。


「へぇ、こんなふうに絵を描くのか」
「絵じゃないです。化粧です」


雪那さんが興味津々で雑誌のページをめくっている。


「うーん。アイライン難しそうだな。まつげの隙間を塗りつぶすようにって、目に入っちゃう」


本音を漏らせば、志麻さんが体を引く。
目玉に線を書かれたらたまらないだろう、そりゃ。


「貸してみな?」


ためらっていると雪那さんが私からアイライナーを奪い、するすると線を引いていく。


「あれっ、器用じゃないですか」
「私を誰だと思ってるのよ」


突っ込むとしたり顔の雪那さんは、そのあとも雑誌の手順を確認しながら見事にメイクを施していった。


「うわー、なかなかいい。雪那さんグッジョブ!」


最後に唇にグロスをのせると、クール系のいい女のできあがり。

肝心の志麻さんは鏡を熱心に覗き込み、じっと自分の顔を見つめている。