翌日の朝食も、もちろん彼女のところに持っていった。


「志麻さん、罰のお時間です。残したらダメですよ」


廊下に出てきた彼女に、焼き魚をメインにした和食を無理やり持たせる。

彼女はなにも言わずに扉を閉めたが、『いりません』という拒否はなかった。


「彩葉さま。罰のお時間ですって、そんなにウキウキで言うことですか?」


また一緒にきてくれた鬼童丸さんが呆れ気味だ。


「転んでもただでは起きないの精神です。彼女はどん底まで落ちたのですから、これからはいいことが待っていますよ、絶対」


なんて偉そうなことを言っているが、私自身は両親の死を受け入れるのも簡単ではなかったし、祖母が亡くなってからも沈みっぱなしだった。

だからどん底から這い上がるということが、それほど気軽にできることではないことを知っている。


でも、本人が難しいのなら周りが手助けすればいい。

私がこうして元気を取り戻しつつあるのは、この宿の人たちのおかげだし。