「これ、たっぷりのかつお節でとっただしを使っているんですよ。まろやかで私は好きなんですけど……」
祖母から教えられたかつおの一番だしは、簡単なのに旨味がすごい。
話しかけてはみるものの、彼女の表情は硬い。
「腹が減っては戦ができぬ!」
唐突に大きな声で言い放ったせいか、志麻さんだけでなく白蓮さんも目を点にしている。
「現世ではそう言うんです。とりあえずお腹を満たして戦いますよ」
「戦う?」
志麻さんは険しい顔。
「女は、失恋したときこそきれいになるチャンスです。もちろん志麻さんはそのままでもおきれいですけど、さらにきれいになっちゃいましょう。それで、逃した魚は大きかったと後悔させてやるんです」
彼女の場合、失恋というよりだまされてしまったわけだが、彼女がその男を好きだったのなら失恋だと思い口にした。
「魚?」