不自然に視線をキョロキョロさせると、彼が小刻みに肩を揺らし始めた。
「もう体の震えはおさまったようだな」
「ん!」
まさか、私が照れているのがわかっていてわざとからかっていたの?
恐怖で震えが止まらなかったから?
たしかに、振戦は収まっているし立てそうだ。
それに気づき慌てて離れると、彼は笑いを噛み殺していた。
震えが収まったのはありがたいが、なんという荒療治!
「それはそうと、うまそうな弁当だ。ばあさん直伝の味か?」
「そう、です。料理は祖母に教わりました。両親が幼い頃に亡くなっているので、ひとりになってしまって……」
聞かれてもいないことまで漏らしてしまった。
さっきは祖母の骨を収めたばかりの墓前で強がってみせたが、本当は孤独に耐えられず、誰かにこの不安な気持ちを聞いてもらいたかったのかもしれない。
祖母が逝ってしまってから、どんな料理を作っても味を感じられないし、笑顔を作っても引きつっているのかわかる。