それから三十分。
私はだしのよくきいたうどんを手に、白蓮さんと一緒に志麻さんの部屋の前にいた。
「志麻、出てこい」
彼が声をかけるとすぐに扉が開き、志麻さんが深く頭を下げる。
「お前に罰を与えることにした」
「はい」
険しい顔をする彼女は、心なしか震えている。
「これから彩葉の作った料理を残すことなく食え。それが罰だ」
「えっ?」
目を大きく開き白蓮さんを見上げる彼女は、驚愕しているようだ。
「おうどん、嫌いですか? あまり食べていなかったのでしたら消化がいいものをと思いまして。とろろと卵を入れてみました。どうぞ」
〝月見とろろうどん〟といったところだ。
「いえっ……」
「これは罰だぞ。全部食べろ。彩葉の作った料理の味は保証する」
白蓮さんが話し終えると、私は志麻さんにお盆を手渡した。
すると彼女は呆然として立ち尽くしている。