大皿の料理を囲んでの食事は本当に楽しい。


「和花、もうやめておいたら?」
「勘介が食べたいだけでしょ?」


ふたりはあとふたつになった車麩を取り合いしている。
しかし、言い争いをしている間に、鬼童丸さんが口に入れてしまった。


「あーっ!」


和花さんと勘介くんの声が珍しくそろった。


「うるさいことを言ってばかりで食べないからだ」


そしてその隙に、今度は最後のひとつを白蓮さんがパクリ。


「白蓮さま!」


勘介くんが突っかかると、「早い者勝ちだ」と笑っている。

大人げないでしょ、ふたりとも。

でもこの世界で一番強い彼が、車麩ひとつのことでしたり顔をしているのがおかしくて噴き出してしまった。
子供のケンカみたいだ。

自分の作った料理をこれほど躍起になって取り合いされるって、なんて幸せなことなのだろう。