しかも同じ屋根の下に住まわせているって、どういう神経の図太さ……いや、寛容な心の持ち主なのだろう。


「どうして平気なんですか?」
「彼女には殺せなかったしね。うすうす黒爛の手下の男にだまされたのだと気づいているだろうから、もうなにもしないだろう」


また黒爛だ。


「殺せなかったって、それは結果論ですよね。もしかしたら白蓮さんが死んでいた可能性だってあるんでしょ?」


ムキになって突っかかると彼は足を止めて私を見つめる。


「黒爛は女ならば俺が油断するかもしれないと考えたらしいが、俺が油断するのはお前だけなのにな。殺せるわけがあるまい」


今、ものすごく恥ずかしいことを言われたような。

視線をキョロッと外すとクスッと笑われた。


それじゃあ、彼女が待っているのはその手下のあやかし? 
好きな気持ちを利用されたということ?

現世にも結婚詐欺の類があるが、それと似ているのかもしれない。


「最低……」
「は? 俺、なにかしたか?」