「いつも食べないんですか?」
「一日一食ですね。今朝食べているのであとは拒否です」
私ならお腹がすいて耐えられない。
「小食なあやかしなんですね」
彼は私を目で促して部屋から離れたあと肩をすくめる。
「それがそうではないんですよ。最低限生きていけるだけの食べ物だけ口にしている感じです。私たちにささやかな抵抗をしながら、待っているのでしょうけど……」
「待って?」
彼が気になることを口にしたので話を遮った。
「好きな男をです」
「好きな? そんな人がいるなら、自分から会いに行けばいいですよね?」
「いろいろと複雑な理由がありまして。実は罪を犯したのは彼女です。ですから軟禁に近い状態ではあるのですが、白蓮さまはそういうおつもりではなく彼女を守っ――」
「鬼童丸さま!」
話の途中で雪那さんが駆け寄ってきたので、最後まで聞きそびれてしまった。
「彩葉さま。あちらは終わりましたからあとはお任せください。行きましょう」