「まあ、罪を犯した者もいますが、怖いというのはちょっと違います。危害を加えそうなあやかしはいませんし、いたら白蓮さまに一撃でやられているでしょう」
「一撃……」


一番怖いのは白蓮さんか……。


「私がひとりで行きましょうか?」
「いえっ。行きます」


罪を犯したというのは気になるけれど、彼がついていてくれるし大丈夫だろう。


宿の廊下を進んだが、シーンと静まり返っている。
どうやら雪那さんたち三人は、ずっと先まで行ったらしい。


「さて、まずはこの部屋。お食事をお持ちしました」


鬼童丸さんが扉の向こうに声をかけると、スーッとそれが開き、色白で折れてしまいそうなほど細い女性が現れた。

なんのあやかしかは不明だが、とりあえず人形なのでホッとする。


「いりません」


しかし、その細い体にはそぐわないような力強さで、ピシャリと扉を閉めてしまった。
あまりに一瞬のことで、目が点になる。


「はー。いつもこの調子だ」


鬼童丸さんが深いため息をついている。