献立は、だし巻きたまごに桜庵でも人気だった肉じゃが、白蓮さんが好きだと言っていた揚げ出し豆腐、そして車麩の照り焼き。

祖母に教わった通り、作っていく。


中でも車麩の照り焼きはほかの店にはなかなかないメニューで、だし巻きたまごとともに常連客のほとんどが注文するという一品。

車麩を水で戻したあと、だし汁、しょうゆ、砂糖、みりん、しょうがの入ったつけ汁につけておいてのちに絞り、片栗粉をつけたあと少し焦げ目がつくくらいに焼くのだ。

これがご飯によく合って食が進むと評判だった。


「彩葉さま、いい匂い!」


どこからともなく現れたのは勘介くん。


「ありがとう。茶色いものばかりだけど……」


学校では、曲げわっぱの弁当箱に入った煮物の類ばかりの地味なおかずで、肩身が狭かったこともあった。
それを思い出して声が小さくなる。


「もう、お腹がくっつきそうです」


しかし彼はまったく気にする様子もなく、先にできた車麩を覗き込んでいる。