人間界のようなしがらみが幽世にもあることを知り、生きていくのは簡単じゃないと妙に納得したりして。


「ねぇ。今晩、宿の人たちのお食事も一緒に作ってもいいかな?」


外から持ってきてもらっていると聞いたが、温かいものを提供できるほうがいい。

たしか陽の世は、それぞれ得意なことを提供し合って生活を成り立たせていると聞いた。

こちらで生きていく覚悟なんてないけれど、素敵なシステムだと思い参加したくなったのだ。

白蓮さんも『ただ守られるのが気に食わないのなら、彩葉はここで飯を提供しろ』と言っていたし。


「それは皆喜びますよ! 外部に出す注文を止めてまいりますね。材料はなんなりとお使いください」


和花さんは軽い足取りで台所を出ていった。

自分の料理を作るという行為が喜ばれていることに胸が熱くなる。


「よし。今日は得意料理からね」


私は気合を入れてジャガイモに手を伸ばした。