「今いるあやかしは六ですね。幽世が穏やかだと少ないんですよ」
和花さんは即座に返す。
勘介くんが、白蓮さんは傷ついたあやかしや身寄りのない子供のあやかしなどを引き取っていると言っていたが、平和だとそういう事例自体が少ないのだろう。
「昔は宿をしていたのよね。そのときもこの人数で働いていたの?」
「いえ。ほかに庭番の吾郎(ごろう)さんとか、風呂掃除の栄(さかえ)さんとか。あとは台所を手伝っていた大食いの操(みさお)さんもいました。宿をたたんで仕事がなくなったので、皆出ていったんですけどね」
「そう……」
昔はそこそこにぎやかだったようだ。
「その操さんは、料理はしなかったの?」
私がいなくなって料理が提供できなくなったと言っていたけど。
「操さんは野槌(のづち)という大食いのあやかしで、本来食べる専門なんです。でも幽世では仕事をしないと食事にもありつけませんからね。好きな料理の近くで働きたいと来たらしいのですが、なにもできなくて」