実際、黒爛はすぐに去っていったし、彼はたしかに細身ではあるが肩幅はがっちりしていて、和服の袖からチラリと見えた腕には筋肉の筋がスーッと見える。
鍛えられているようだ。
「黒爛というのは誰なんですか?」
どうして襲われたのか、さっぱりわからない。
しかも殺すだのなんだの、尋常ではない。
彼は質問に答えることなく、お弁当を供えたばかりの墓石に視線を移した。
「納骨だったか」
「……はい」
もしかして祖母の知り合い?
しかし、どう見ても二十代に見える彼と祖母の接点はなんだろう。
やはりお客さんなのかな……。
「キャッ」
尋ねようとした瞬間、彼が私を軽々と抱き上げるので目が点になる。
「な、なにして……。下ろしてください」
「歩けないんだろ? おとなしくしてろ」
威圧的な言い方をする彼だったが、その視線は優しい。
それにしても、まつ毛が長い……。
二重で切れ長の目に見惚れてしまい、そんなことを考える。
しかしすぐに我に返った。