あと、十五分か……。自分の好きな人と一緒にいる十五分は、きっと短い。結月といたら、いつも時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。

私は隣にいる、彼の横顔を見つめた。

少し猫っ毛な髪の毛に、キリッとした男らしい瞳。鼻筋は高くて、艶のある唇。

「ねぇねぇ、七海?こっち見すぎだから。俺の顔になんかついてる?」

そして、小さな頃から変わらない、無邪気なこの笑顔。……ああ、私の隣に、結月がいてくれる。肩と肩がもう少しで触れそうな距離。こんなにも近くに大好きな彼がいることが、心の底から本当に嬉しい。

……と同時に、切ないんだ。

「結月は、」

「ん?」

「結月は、どうして急に一泊旅行なんて行こうと思ったの?」

答えてくれない、と分かっていながらも聞いてしまう。

「いや、ちょっとね。昨日も言ったけど、行きたい場所があって」

返ってくる返事は過去と同じ。〝それってどこなの?〟と突っ込みたい衝動に駆られた私だったが、出かけた言葉は直前で引っ込めた。

私が何度聞いても結月が困ったように笑って話をはぐらかすって、知ってるから。

「……そっか。その行きたい場所に、行けるといいね」

「ああ。ありがとう」

目尻をきゅるりと垂らした結月は、再びまっすぐに前を向く。結月の行きたかった場所。それは、結月が亡くなってから四年が経った今も明らかになっていない。

結月が目的地に向かう前に、彼は天国へ旅立つことになってしまったからだ。

「ねぇ、七海?」

「……ん?」

ふいに結月に名前を呼ばれ、顔をあげると、結月は私の方をじいっと見つめていた。以前はこんなことはなかったから、不思議に思い首を傾げる。

それでもやっぱり、自分の好きな人にこんなにも近距離で見つめられると、照れてしまうなあ。

結月のせいで真っ赤に熟れ始めた頰を隠すように、私は少しだけ俯いた。

「なんで俯いてるの?」

悪戯な声が聞こえ、唇をむす、と固く結ぶ。結月のばか。まるで、私が照れているのを分かっているかのような言い方。