「お待たせいたしました。お迎えに参りましたので、ご乗車ください」
そう言って私を笑顔で迎えてくれたのは、車掌さんだ。
「それでは、二つ目に向かう駅のことを説明させていただきたいので、もとの席に戻っていただきましょうか」
車掌さんは初めのときと何ら変わらないような感じで、私を席へ案内してくれる。私より幾分も背の高い車掌さんの背中を見つめながら後ろを静かについていく私。
「では、こちらへどうぞ」
「……ありがとうございます」
席へたどり着いた後は、彼に促されるままにゆっくりと腰かけた。
「どうでしたか?自分の過去の世界は」
「なんか、とても不思議でした。もう撤去されたはずの公衆電話がまだ存在していたりして、ああ、ここは確かに私の過去なんだなあって」
「……そうですか。みなさん、初めは同じようなことを言われます。夢みたいだったとか、まだ信じられないとか」
「ふふ、私も、そんな感じでした」
やわらかく微笑んだ私の表情を見て、車掌さんも小さく笑みをこぼす。そして再び、口を開いた。
「なにか気になることとか、引っかかることとかはありませんでしたか?七海さんの不安を解消できるよう、お答えできることはお答えしたいと思っていますので、なにかあればと思いまして……」
そう言われて、ああ、と、さっきまで抱いていた疑問がふつふつと頭に浮かぶ。
「少し、不思議に思ったことがあるんですけど」
「はい、なんでしょう?」
話を持ちかけた私の顔を覗き込むようにして、車掌さんが首を傾げた。
「服装も過去に合わせて変わる、っていうのは理解できたんです。でも、服装が過去のものに切り替わるとき、違和感も何も感じないんですけど、それはそういうものなんですか?あまりにも知らない間に服装が長袖になってたから、ちょっと、びっくりして……」
そう、過去の世界に戻ってみて、私が一番驚いたこと。車掌さんは「ああ」と小さく声を漏らす。