小夜が私の方を振り向いたのかは分からない。でもきっと、小夜も私と同じように真っ直ぐ前を向いて歩いて帰ったんじゃないかと思う。……小夜も、私のことが大好きだから。
駅まで向かう途中。ぐるぐると脳内を巡るのは、さっきまでの小夜との出来事。主には、小夜がくれた言葉だ。
小夜は、言ってくれた。
〝いつでも連絡してね?〟と。
それだけじゃない。
『七海の頼みなら、いつでも駆けつけるから。そんなに遠い町じゃない。車や電車を使えば、すぐなんだから。一人で悩まず、どうにもならなくなったときには、連絡してよね。そのときは、飛んで駆けつける。そして私が、抱きしめてあげる』
そう言って、笑ってくれた。
その言葉を思い出す度に、胸がチクリと痛む。
小夜のことを信じて、いじめのことを相談できなかった自分。小夜の迷惑になったらいけないと思い、連絡すらできなかった自分。そんな自分を不甲斐なく感じてどうしようもない。
けれどそれと同時に、思うんだ。
私のことをこんな風に大切に思ってくれる人がいたんだ、と。
今までだって、決して小夜に好きでいてもらえていないと思っていたわけではないけれど。それでもこうやって言葉にしてもらえると、真っ直ぐに心に響く。素直に、嬉しいと思える。
小夜と出会えて本当によかったなあと、いい友達ができたなあと、そう感じながら、私はひたすら駅を目指した。
駅から公園まではそんなに離れてはいない。だから、視界にすぐに駅を捉えることができた。やっぱり駅前には古びた公衆電話があって、ここは半年前なのだ、と、今日何回思ったか分からないことを再び実感する。
もともと利用者のあまりいないこの駅。夕方になれば少しばかり人がいてもおかしくないものの、今日は見渡す限りいないようだ。
まるで、私がここへ来るのを見計らって、誰かが人を遠ざけたのではないかと思うほど。……まあ、それは考えすぎだとは思うけれど。
「……さあ、行こうかな」
確か、対象人物と別れた後は、また改札をくぐって列車を待つようにと言われている。そうすれば、またお迎えがくるらしい。