例えば、球技会。小学校、中学校と、心の許せる友達が誰一人いなかった私は、行事ごとの昼食を、いつも一人で食べていた。
でも、小夜と友達になったこの二年間は違う。小夜はいつも明るく笑って、『一緒に食べよう』と優しく声をかけてくれた。
……それに、普段の生活でもそう。
月に何度か近くの街へ遊びに行ってみたり、放課後、新しくできたカフェに出かけてみたり。自分なんかが経験できないと思っていたことを、全て小夜が叶えてくれた。
いつも私の隣で眩しいくらいに笑っている小夜は、孤独だった私に差した、一筋の光。
「小夜」
「……なに?」
「さっき、言ってくれたよね。小夜にとって私は、親友だよって」
「そうだよ、当たり前じゃん」
「……私も、小夜に同じ言葉を返すよ。小夜は私にとっての親友で、大切な人」
小夜の表情が、ほぐれるように和らぐ。
私は、この小夜の優しい笑顔が大好きだ。
「お互いが、お互いに。こんなにも大切な存在だったんだね。……まあ、私は気付いてたけどね?」
目尻をやんわりと落としたままの小夜は、少し冗談っぽく肩を竦める。私はこの仕草がなにを意味するのか、知っていた。
これは、彼女なりの精一杯の照れ隠し。
「……ねぇ、七海?」
「どうしたの?」
彼女に名前を呼ばれた私は、首を横に傾げる。
「親友の私と、一つだけ、約束してくれる?」
小夜の口から飛び出たのは、〝約束〟という単語だった。
これも、半年前とは違う。まあ、当たり前か。話の流れや別れ方が、過去と全く違うのだから。それでも、ここまで身体が制御されることなく話が続けられているということは、未来を変えるには至っていないということだろう。
「約束?」
彼女のいう〝約束〟に疑問を持った私は、それをそのまま疑問形で返した。そしたら彼女も、「そう。約束」と、私の台詞を反復させる。