私が、それを先に言おうと思っていたのに。

小夜はそんなことも知らず、さらに優しげな表情を浮かべた。

「私にとってね、七海は、もう二度とできることのない唯一無二の友達。……ううん、親友かな」

「親友……?」

「そう。七海の代わりなんて、これから先、どこを探してもいないと思う。……私ね、七海と一緒に高校生活を送れたこと、宝物のように思ってるんだよ」

小夜の優しい微笑みと、放たれた言葉たちが、私の心に真っ直ぐ響く。

小夜とこの二年間、ずっと一緒に過ごしてきたのは、私自身。だから小夜の顔を見ていれば、それが本心だということもよく分かった。

「……そんな、大袈裟だよ」

だけど、どことなく恥ずかしくて。小夜から視線を逸らして、照れ隠しをするようにはぐらかしてみるけれど。

「七海はやっぱり、恥ずかしがり屋さんだね」

どうやらそれは、小夜にはお見通しみたいだ。

小っ恥ずかしさから逃げることをやめた私は、地面に落としていた視線を持ち上げ、彼女を見つめる。

視線の先にいた彼女も、ただ真っ直ぐに、私だけをその瞳に映していた。

「大袈裟、とかじゃなくってね。七海が嬉しそうに笑ってると、私も嬉しい。七海が悲しそうだと、なんだか私も悲しい。ありがちな話かもしれないけど、私、本当にそう思うんだ」

「……うん」

「……七海のことをね、心から大切に思ってるの」

そう言い切った彼女の瞳は、心なしか潤んでいるようだった。

半年前は、こんな別れ方をしなかった。だから、今回初めて、こんなにも泣きそうな彼女の顔を見たような気がする。

……でも。何はともあれ、小夜は自分の思いを言葉にしてくれた。私に伝わるように、懸命に話してくれた。

だったら、私も言わなければ。現実の世界の中では伝えきれなかった、小夜への感謝とともに。

「……私も、ね」

押し出した言葉はあまり大きなものではなかったけれど、それでも小夜は私の話に耳を傾けてくれる。

「私も、小夜と出会えてよかった」

「……うん、ありがとう」

「小夜がいてくれたから、学校も楽しく通えたんだ。今まで、友達と呼べる存在がいなかったから、小夜と一緒にいる時間全部が、新鮮で楽しかったよ」

思い出せば、小夜と過ごした日々は幸せなことばかりだった。