帝都、ほのぼの春爛漫。
 桜舞い散る多摩川のほとりを歩く少女がひとり。

「……です。……ふつか……では、……いますが……しくお願い、申し上げます」

 年の頃は十五、六。
 まだ成長しきらない体に、流行りの洋装を纏っている。

 ぱりり、と糊をきかせたブラウス。
 きゅうっとウェストをしぼったスカートは膝を隠して揺れている。
 殿方用の生地で縫い上げてある特注品だ。