たたみかけるような彼の言い方に、私は目も合わせずにため息をつく。

「しつこい……」
ぼそりとつぶやくと、
「感じ悪……」

同時に彼が眉をひそめながらそう言った。感じが悪いなんて、よく私に言えるものだ。

「いいね、いいね。新手のナンパであっても、実は本当にどっかで会ってたとしても、おいしいわー」

そこで沙和が横から楽しそうに茶々を入れてくるから、私はますますうんざりする。

「誰?」
「鎌田沙和。よろしくね。結子と同中」
「へぇ」

彼と沙和が話しているうちに、ずれ落ちていたバッグを肩にかけ直す。

「バスきちゃうから、行こう、沙和」

私が教室の出口に向かうと、沙和が残念そうな声を出した。

「えー、時間ずらせばいいじゃん。川北くん、話があるんじゃないの?」
「いいの、私は話すことないから」

動こうとしない沙和を引っ張って数歩進むと、また背中に低い声が投げられる。

「じゃあ、思い出したってこと?」
「思い出せないから話しても意味ないってことです」

私は振り返りもせずにそれだけ返して、沙和と一緒に教室をあとにした。