『えー、今夜の作品は、S県在住のラスクさんの作品です。ラスクさんは、もう常連さんですね。すごいです』

二年前からほぼ欠かさず聴いているこのラジオ番組。同じS県ということで、約一年半前に小説が選ばれたときから耳に残っていた、ラスクさんという名前。この人の作品の朗読を聴くと、その短くも深い世界にどっぷり浸ることができて、すぐにファンになってしまった。

ラスクさんの作品は、私がラジオを聴きだす以前から採用されていたらしい。
私が聴いたことがあるのは、全部で三回。一回目はファンタジーな世界を舞台にしていて、冒険者が世界を救う爽快な物語、二回目はよくある恋愛小説と思いきや、最後のどんでん返しに驚かされた。三回目のこの録音した作品は、おばあちゃんと思春期の男の子の約束の物語だった。

幅広いジャンルで、稚拙な表現もあるけれど、その文章は力強くてそれぞれ世界観に引き込まれる。

『小学生高学年になると、僕はばあちゃんの横ではなく、一メートル前を歩くようになった。一緒にいるところを、同級生に見られたくなかったのだ。ときおりうしろを見て確かめたときににっこり笑うばあちゃんの顔にさえ、なぜか気恥ずかしさを感じていた』

耳に流れ込んでくる言葉たち。読み手がプロということもあるけれど、やっぱりこの文章の力が私をするりと物語の中へと誘導していく。