私は絵が好きで、将ちゃんはよく人形を使って演劇遊びをしていたので、自然と担当が決まった。板の上で私がノートに絵を描き、それにたどたどしい字で将ちゃんが文を書いていく。

通学路が同じでいつもこの公園を通っていたから、放課後はしょっちゅうここで絵本をつくっていた。ただそれだけのことが、秘密の場所で作成しているということも手伝って、公園遊びにもテレビにも勝る、とてつもない楽しみになっていた。

『こっちはね、この世界の王子様。上手でしょ?』
『服が金色なだけで、顔、全部おんなじじゃん』
『えー、昨日の夜、将ちゃんの写真を見て描いたんだよ?』
『なんでだよ』

たとえばこの場所で、同じように秘密基地をつくってひとりで絵を描いていても、私はきっとここまで楽しんでいなかっただろう。この時間が好きだったのは、将ちゃんと一緒だったからだ。

彼は小さい頃から端正な顔をしていた。まだ恋愛なんて知らないはずの女子たちでさえ、みんな将ちゃんのことが好きだったように思う。それは私にとっても例外ではなく、絵本の中の王子様は全部将ちゃんに見えたし、王子様を描くときも、将ちゃんをモデルにしていた。

だからこそ、ふたりだけで秘密基地にいるということは、幼心に優越感を存分に満たしてくれた。まるで、自分がお姫様になったような気がしていたのだ。