「入学式の日、帰るときにも話してたけど、ふたりとも知り合い?」
嶋野さんは悪気のない笑顔で聞いてくる。できることなら触れてほしくない。私は、「全然」とそっけなく答えたけれど、川北くんがすかさず、
「小一までの幼なじみ。お互い引っ越したから」
とかぶせるように言った。
「え? そうなの? うわー、すごいね。えーと、じゃあ……八年ぶりくらいの再会ってこと?」
嶋野さんが小さな拍手をしながら目を輝かせている。私にとっては、何ひとつ嬉しいことなんてないのに。
「でも、私は覚えてないんだ」
つくり笑顔でそう言って、私はその場から離れた。
嶋野さんは、川北くんのブレザーを引っ張りながら、
「そうなの? 将真くんの記憶力、すごいねー」
などと感心している。
疲れる。なんて疲れるんだろう、まだ高校生活ははじまったばかりだというのに。
そう思いながら自分の席に着き、なおも楽しそうに話しかけている嶋野さんと、それに答えている川北くんを横目に見る。
川北将真がいるって知っていたら、この高校に入らなかったのに。
頭の中でつぶやいて、顔を反対側に向けて窓の外を見た。今日は風が強くて、灰色と黒のまだらな雲がけっこうな速さで流れている。
そう、たしかに私と彼は、小一までの幼なじみだった。そして、当時、一番仲がいい友達だったんだ。
嶋野さんは悪気のない笑顔で聞いてくる。できることなら触れてほしくない。私は、「全然」とそっけなく答えたけれど、川北くんがすかさず、
「小一までの幼なじみ。お互い引っ越したから」
とかぶせるように言った。
「え? そうなの? うわー、すごいね。えーと、じゃあ……八年ぶりくらいの再会ってこと?」
嶋野さんが小さな拍手をしながら目を輝かせている。私にとっては、何ひとつ嬉しいことなんてないのに。
「でも、私は覚えてないんだ」
つくり笑顔でそう言って、私はその場から離れた。
嶋野さんは、川北くんのブレザーを引っ張りながら、
「そうなの? 将真くんの記憶力、すごいねー」
などと感心している。
疲れる。なんて疲れるんだろう、まだ高校生活ははじまったばかりだというのに。
そう思いながら自分の席に着き、なおも楽しそうに話しかけている嶋野さんと、それに答えている川北くんを横目に見る。
川北将真がいるって知っていたら、この高校に入らなかったのに。
頭の中でつぶやいて、顔を反対側に向けて窓の外を見た。今日は風が強くて、灰色と黒のまだらな雲がけっこうな速さで流れている。
そう、たしかに私と彼は、小一までの幼なじみだった。そして、当時、一番仲がいい友達だったんだ。