「ばあちゃんちがあっちだから、帰省でたまに行くことがあるんだけど、ほら、あの公園さ、木製の遊具は老朽化が激しくてほとんど使用禁止に……」
「よし、終わった」

ふう、と腰に手をあてて息を吐いた私は、室内に備えつけられている小さな手洗い場で雑巾を洗う。

「お疲れ様です」

そして、座ったままの川北くんにそれだけ言って、足早に教室へと向かった。さぼって話に花を咲かせている女子たち、ふざけて戯れている男子たち。昼休みの延長のような賑やかさの中を進んでいく。すると、うしろから川北くんが顔を出してきた。

「おい、聞けよ、話」
「え? なんか話してました?」
「……面倒なやつだな、それに大人げない」
「子どもですから」
「その敬語もなんなの?」
「距離を取りたいので」

そんなやりとりをしながらどんどん足を速めるうちに、教室へと着く。教室は掃除が終わって机が整列されたばかりのようだ。

「将真くん、おかえり。あ、瀬戸さんも。そういえば一緒だったね、掃除の場所」

一番手前の机を並べ終えたばかりの嶋野さんが、ふふ、と笑って入口に来た。彼女は、教室担当らしい。