『"結子(ゆいこ)の願いが叶いますように"』

一緒につくった絵本を前に、(しょう)ちゃんはそう祈ってくれた。
その横顔はまるで王子様みたいで、
私は彼が唯一の味方だと信じて疑わなかった。

けれど、あの日を境にそれは一変した。
お気に入りだった秘密基地も、
大好きだったケーキも、
一生懸命つくった絵本も、
信じていた将ちゃんも、
全部あの日に置いてきた。

無邪気だった私もそう。
最後のページを破られたあの日の中に、
いまだ閉じ込められたままなんだ。