幸せになったかとか、長生きしたいかとか、そんな問いを投げ掛けられると、わたしは答えられない。

 死にたいよ。今でも。消えてなくなりたいと、しょっちゅう思うよ。
 それでもね、どうせ死ぬんなら、せめて何か一つ成し遂げてからにしようかって、それは自分と約束している。小説家として、まだちゃんと実績があるわけじゃないんだから。まだこんなところで引き下がるわけにはいかないだろうって。

 筆を折るときは、生きることをやめるとき。死んだっていいと思えるまで、書いて書いて書き続けて、言ってやりたい。死にたがりだった過去の自分に向けて。
 ほらね、その命をそこで捨てるのはもったいなかったでしょ、って。死ななかったから、ほしいと求め続けたチカラが手に入ったんだよ、って。

 小説を書くことは、チカラだ。書いている間、わたしは何者にでもなれる。自分という枠から解き放たれて、どんな世界をも創ることができる。どんな生き方だって死に方だってできる。

 自分で切った傷痕は、今でも残っている。両耳合わせて七つのピアスホールは、ふさぐつもりもない。全部を忘れて上手に大人になることなんて、結局できずにいる。

 下手くそで傷だらけの生き方の、何が悪い? 人と違う道しか進めなくて、何が悪い? 普通と呼ばれる世界にいられなくて、何が悪い?
 やりたいことを、まだ、やり切っていない。だから、あきらめない。こんなところで終わってたまるか。

 そんなふうにして、ねえ。
 今も生きてます。
 今もずっと書いてます。
 まだ死にません。
 死にません。

【了】