学校に行くと、驚くほど私たちは注目された。

「ちょっとひなた! これどういうこと!?」

 みんなの視線に戸惑っていたら、私が来るのを待っていたのか、沙奈ちゃんがスマホを持って駆け寄って来た。
 そこには、さっきの私たちの写真がある。

 どうやら、注目されている原因はこれらしい。

「矢野ー。道中で抱き合うとかやらしー」
「二人きりのときはもっとやばいことしてんじゃねーのー?」

 男子たちのからかいの言葉に、耳を塞ぎたくなる。

 自分に無関係だから、こんな無責任なことが言えるのか。

 これだから、そっとしておいてほしいのに。

「うるせーぞー!」

 朝だというのに、聖は躊躇することなく大声で陰口をかき消した。

「俺とひなたは幼なじみ! 泣いてるひなたを慰めててもおかしくないだろ」
「でも矢野、告白してたじゃん」

 たしかに、朝から廊下で告白しておいて、話題にならないわけがない。

「お前らさー。冗談てものを知らねーの?」

 完全に嘘だとわかっているのに、私は何も言えなかった。
 誰にも嘘だと悟らせないような完璧な笑顔に、申し訳なさが込み上げる。

 聖の告白は冗談だという嘘を信じる人もいれば、疑う人もいた。

「いやいや、お前の場合幼なじみの距離じゃないから」

 私たちにとっては普通なことが、異常だったらしい。