本当に、ひなたの幸せしか祈っていないんだ。

 俺は、自分の幸せのために動いてしまったというのに。

「じゃあ、そういうことで。もう会うことはないだろうけど、またな」

 そう言って、天形は帰っていった。

 一人残った俺は、その場に脱力したかのように座り込む。

 ……誰だよ、アイツがガラスメンタルだって言ったの。
 不良だっていうのも、嘘だったりしないよな。

 なんであんなに優しいんだ。
 純粋にひなたを想っているんだ。

 これじゃまるで……

「兄ちゃん、あのかっこいい兄ちゃんに負けたのか?」

 ボールを抱えた少年が俺の顔を覗き込んできた。
 それはさっき、天形からボールを受け取った子だった。

 他人から言われて、やっぱりかと思う。

 俺はアイツに、負けてしまった。
 これは、近江に怒られるだろうな……

「……なんで俺が負けたって思うんだよ」
「兄ちゃんたち喧嘩してたんじゃないの? あと、かっこいい兄ちゃんはサッカーが上手いだけじゃなくて、服もかっこよかった」

 それだけで俺が負けたというのはいかがなものか。

「喧嘩はしてないよ。ちょっと疲れて休憩してただけなんだ」
「なんだ、そっか。じゃあな!」

 少年は走って公園を出ていった。
 対する俺は、重い足取りで家に帰った。