「今日の放課後なんだけど、ちょっと時間ある?」
「ごめん、俺用事があるんだ」

 ひなたの誘いを断るのには気が引けたけど、早いうちに天形と話しておきたいから、断るしかなかった。

「……そっか。わかった」

 ひなたの笑顔が悲しそうに見えて、引き留めようとした手を必死に抑えた。



 放課後、俺は天形の通う学校の校門の前で天形が出てくるのを待っていた。


「あー! アキラの友達だー!」

 すると、人混みの中であるにも関わらず、その声がよく通った。
 声の主は俺のところに勢いよく走って来た。

 それはあの日、天形といた子だった。

「賢そうなお兄さん、アキラの友達だよね?」
「矢野聖です」

 泉さんはじっと俺の顔を見て、吹き出した。

「敬語って! 真面目すぎー」

 遠慮なく笑い続ける彼女の頭に、誰かが手を置いた。
 彼女はその手を掴んで振り向いた。

「アキラ!」

 それは不機嫌な雰囲気を醸し出す天形だった。

「お前、何してんだよ」
「アキラの友達見つけて思わず……」
「泉じゃない。矢野。なんでお前がここにいんの」

 天形が不機嫌な理由は、どうやら俺にあるらしい。
 だが、いくら睨まれても、引くわけにはいかない。